日本の移動体通信事業者(MNO: Mobile Network Operator)に割り当てられている無線周波数(バンド)について整理し、図を使って分かりやすく説明します。
5G/4G/3Gの携帯電話通信サービスで利用されている無線周波数は様々な異なる周波数帯域(バンド)が利用されています。また、周波数毎に携帯電話通信サービスで利用されている帯域(どの周波数からどの周波数までか)は正確に決められています。その正確な周波数とその隣接関係を図で分かりやすく説明します。
日本の移動体通信事業者(MNO)は以下の図に示す会社です。
ミリ波(28GHz帯: n257)の周波数割り当て状況詳細
ミリ波(28GHz帯: n257)の周波数割り当て一覧表(ローカル5G含む)
28GHz帯域(n257)は、広い周波数帯域幅が確保されており高い通信速度を出す事ができる周波数帯域です。しかし、28GHz帯域は、周波数の低い電波と比較して電波が飛びにくく、建物や障害物の裏側にも回り込みにくい電波です。そのため、モバイル通信のエリアを広く作るには難しい周波数です。
28GHz帯域(n257)は、日本では段階的にエリアが増えていきます。ただし、都心部や駅、ショッピングモールなどスポット的に利用されるケースが多いです。
ミリ波(28GHz帯: n257)の周波数割り当て図(ローカル5G含む)
各移動体通信事業者(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)に400MHz帯域幅割り当てられています。また、ローカル5Gにも、28GHz帯域(n257)が割り当てられています。(下図参照)
Sub6(3.7GH帯: n77/n78, 4.5GHz帯: n79)の周波数割り当て状況詳細
Sub6(3.7GH帯: n77/n78, 4.5GHz帯: n79)の周波数割り当て一覧表(ローカル5G含む)
Sub6の3.7GHz帯域(n77/b78)は、5G NRのサービスの主要バンドです。4.5GHz帯域(n79)には、ローカル5G用の周波数帯域も割り当てられています。
Sub6(4.5GHz帯: n79)の周波数割り当て図(ローカル5G含む)
4.5GHz帯域(n79)は、主にlocal 5の周波数帯域となります。この周波数帯域(n79)は世界的には、5G NR(5G New Radio)としてあまり利用が見込まれない日本独自の周波数帯域です(日本以外では中国のみが利用)。しかし、5Gの3.7GHz帯域(n77/n78)とは異なり、衛星通信による干渉を受けにくいです。そのため、NTTドコモは積極的にこの4.5GHz帯域(n79)にて5Gのエリア拡大をしています。
Local 5G用の周波数は、「Indoor専用(屋内エリアカバー用)の周波数帯域」と、「OutdoorおよびIndoor両方に利用できる周波数帯域」に分けて周波数が割り当てられています。(下図参照)
Sub6(3.7GH帯: n77/n78)の周波数割り当て図(ローカル5G含む)
n77はn78を含みます。3.7GHz帯域(n77/n78)には、日本の全ての移動体通信事業者(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)が5G NR用に100MHz幅ずつ周波数が割り当てられています。
KDDIは100MHz+100MHzで合計200MHz幅の周波数が割り当てられています。(下図参照)
Sub6(2.5GHz帯: バンド41、3.5GHz帯: バンド42)の周波数割り当て状況詳細
Sub6(2.5GHz帯: バンド41、3.5GHz帯: バンド42)の周波数割り当て一覧表(WBA含む)
バンド41(2.5GHz帯域)とバンド42(3.5GHz帯域)は、元々は4G LTE(TDD)用に割り当てられた帯域です。周波数幅も比較的広い帯域です。
この帯域には、地域広帯域移動無線アクセスシステムWBA(Broadband Wireless Access)の帯域も含まれます。BWAシステムは、地域の公共サービスの向上を目的とした無線システムです。
Sub6(3.5GHz帯: バンド42)の周波数割り当て図
3.5GHz帯域(バンド42)は、キャリアアグリゲーション(CC: Carrier Aggregation)と言う技術で、他の周波数帯域と同時に利用する事で高い通信速度を出すために利用されている周波数です。
3.5GHz帯域(バンド42)は、4G LTE (TDD通信)用に割り当てられた周波数ですが、5G NRへの周波数の転用が積極的に進められている周波数帯域です。
NTTドコモはこの帯域で、80MHz幅の帯域が割り当てられています。
Sub6(2.5GHz帯域: バンド41)の周波数割り当て図(WBA含む)
BWA(Broadband Wireless Access)システムは、全国BWAと地域BWAに分かれます。
- 全国BWA:KDDI(UQコニュニケーションズ)が50MHz幅、ソフトバンク(Wireless City Planning)が30MHz幅で周波数を保有しています。既に全国でサービスされています。
- 地域BWA:日本の地域毎に2.5GHz(バンド41)の周波数が割り当てられています。地域毎に様々な用途で利用されています。
Sub6(バンド40, n40: 2.3GHz帯域)の周波数割り当て図
バンド40は、携帯電話としてグローバルで利用されている帯域で、多くの端末(スマートフォン)が対応しています。2022年5月に、2.3GHzの周波数がKDDIへ割り当てられました。2023年7月に、2.3GHz帯での運用をKDDIは開始しました。
2.3GHzは、既存の「放送事業」と、KDDIの「モバイル通信」で、ダイナミック周波数共有されます。既存の放送事業は、放送事業者が報道番組中継やマラソン中継等において放送番組素材伝送用に利用しており、常時の電波発射は行っていない状況です。
ローバンド(2.0GHz帯: バンド1、1.7GHz帯: バンド3/9、1.5GHz帯: バンド21/11)の周波数割り当て状況詳細
ローバンド(2.0GHz帯: バンド1、1.7GHz帯: バンド3/9、1.5GHz帯: バンド21/11)の周波数割り当て一覧表
2.0GHz帯域(バンド1)以下の周波数は、FDD(Frequency Division Duplex, 周波数分割複信)システムです。FDDシステムはダウンリンクとアップリンクで別々に周波数が割り当てられています。(下表参照)
また、この2.0GHz帯域(バンド1)より周波数が高い帯域はTDD(Time Division Duplex, 時間分割複信)システムです。
ローバンド(2.0GHz帯: バンド1)の周波数割り当て図
2.0GHz(バンド1)は、従来の3Gモバイル通信システムでも広く使われてきた周波数帯域です。4G LTE主要バンドとして広く使われている周波数です。
ローバンド(1.7GHz帯: バンド3/9)の周波数割り当て図
バンド9はバンド3に含まれます。1.7GHz帯域には、全ての移動体通信事業者(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)が周波数を割り当てられています。(下図参照)
1.7GHz帯域(バンド3/9)の、1,765MHz~1,785MHz(アップリンク)、1,860MHz~1,880MHz(ダウンリンク)の周波数は、ドコモと楽天に割り当てられています。東名阪のエリアはドコモで、それ以外のエリアは楽天のエリアとなっています。(下図参照)
ドコモはこの帯域を利用して東名阪地域でサービスをしています。
一方、楽天はこの周波数帯域の周波数を使っていないです。楽天は1.7GHz帯域の低い方の周波数(バンド3)の、1,730MHz~1,750MHz(アップリンク)、1,825MHz~1,845MHz(ダウンリンク)の周波数で4G LTEのサービスエリアを日本全国で広げています。
ローバンド(1.5GHz帯: バンド11/21)の周波数割り当て図
1.5GHz帯域の、バンド11とバンド21は互いに隣接しています。この帯域は、ドコモ、KDDI、ソフトバンクに周波数が割り当てられています(下図参照)
プラチナバンド(900MHz帯: バンド8、800MHz帯: バンド26/19、700MHz帯: バンド28)の周波数割り当て状況詳細
プラチナバンド(900MHz帯: バンド8、800MHz帯: バンド26/19、700MHz帯: バンド28)の周波数割り当て一覧表
プラチナバンドは、モバイル通信で最も低い周波数の帯域です。プラチナバンドの電波は以下のような特徴があります。
- [メリット]建物や障害物の裏側に回り込みやすい(電波の飛びが良い)
- [メリット]建物の壁やコンクリートを透過しやすい(電波の飛びが良い)
- [メリット]雨などによる電波の減衰が少ない(電波の飛びが良い)
- [デメリット]確保できる帯域幅が狭く、高い通信速度(スループット)が期待できない。
プラチナバンドは上記のメリットにより、携帯電話のサービスエリアを確保するためにはとても貴重な帯域です。この帯域の電波は、3Gのサービスに広く利用されてきました、3Gのサービスの停止に伴い、5G NR用の電波として利用される事になります。
プラチナバンド(900MHz帯: バンド8、800MHz帯: バンド26/19、700MHz帯: バンド28)の周波数割り当て図
プラチナバンドの帯域は、日本の移動体通信事業者(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)に割り当てられている周波数帯域の関係を下の図に示します。
下図では、900MHz帯、800MHz帯、700MHz帯の日本のプラチナバンドに割り当てられている、移動体通信事業者(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)の正確な帯域を図で示します。(下図参照)
プラチナバンド(900MHz帯: バンド8)の周波数割り当て図
900MHz帯(バンド8)には、15MHz帯域幅×2(アップリンク、ダウンリンク)で、ソフトバンクに帯域が割り当てられています。(下図参照)
プラチナバンド(800MHz帯域: バンド26/19/18)の周波数割り当て図
800MHz帯(バンド26)に、ドコモとKDDIの周波数が割り当てられています。
800MHz帯域のバンド18とバンド19は、バンド26に含まれます(下図参照)
プラチナバンド(700MHz帯域: バンド28)の周波数割り当て図
700MHz帯(バンド28)には、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの帯域が割り当てられています。それぞれの隣接関係と帯域幅は以下の図をご参照下さい。
この700MHz帯に、楽天の周波数が(アップリンクおよびダウンリンクそれぞれ)3MHz幅でアサインされました。上図に既に、楽天の帯域を記載しました。この楽天へのプラチナバンドの割り当てに関して詳細は以下の記事をご参照下さい。
まとめ
当記事では、移動体通信事業者(MNO: Mobile Network Operator)に割り当てられている無線周波数(バンド)について整理し説明しました。ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の携帯電話通信事業者毎の周波数についても説明しました。
当記事では、以下の日本の各移動体通信事業者(MNO: Mobile Network Operator)の保有する正確な周波数とその隣接関係を図で分かりやすく説明しました。
各移動体通信事業者が運用中の無線基地局数の詳細に関しては以下の記事をご参照下さい。
各移動体通信事業者に割り当てられている帯域(バンド)毎の周波数幅は以下のブログを参照ください。
コメント