携帯電話通信の国際標準化団体の3GPP (Third Generation Partnership Project)について説明します。3GPPでは携帯電話通信の技術仕様だけでなく、仕様の元となるコンセプトを定義しています。5G Networkの元となった技術コンセプトに関して説明します。
携帯電話通信はどのように標準化されているのか?今後、どのような通信の概念や機能が実現される予定なのか?5Gの高度化された技術仕様が決められて、実現するのはいつ頃なのかをまとめます。
3GPP (Therd Generation Partnership Project)とは?
3GPP(Third Generation Partnership Project)は、W-CDMAとGSM発展形ネットワークを基本とする第3世代携帯電話 (3G) システムおよびそれに続くLTE(4G)や、更に次世代である第5世代移動通信システム(5G)の仕様の検討・作成を行う国際標準化プロジェクトです。
3GPPは、1998年に第3世代移動体通信の標準仕様策定を目的として設立された「プロジェクト」です。各地域(ヨーロッパ, アメリカ, 日本, 韓国, 中国, インド)の標準化団体で構成されています。各地域の具体的な標準化団体は以下です。
3GPPには約700社が参加しています。3GPPは、他の標準化団体(SDO: Standards Developing Organization)や業界団体と連携しながら、通信の標準化のギャップや重複をさけながら(エリゾン関係にて)活動を進めています。(下図は、NTTドコモの公開資料[3GPP同行]より参照しています。)
3GPPの標準化、技術のコンセプト
様々な業界からのサービス実現要望に対し、柔軟なネットワークを提供するための技術、アーキテクチャを導入しています。このコンセプトのおかげで、5Gではモバイルネットワークの大きな変化の元となった複数のコンセプトが有ります。
以下に5G標準化のコンセプトとなっている考え方を示します。「ソフトウェアとサービス中心の変革」の考えがベースとなっています。3GPPがこれらの5Gの基本的なコンセプトを決定し、具体的な仕様化を進めています。
以下の公開資料を元にしています。
3GPPの動向, NTT docomo, [PDF file]
3GPPの組織構成と標準化手順
3GPPの組織構成
3GPPは、PCG(Project Co-ordination Group)の配下に3つの検討グループTSG(Technical Specification Group)という組織構成で運営されています。
TSGの配下には、各技術の内容に応じて実際の検討を行う複数のWG(Working Group)が存在します。
TSGは以下の、以下の3種類の検討グループに分類されています。
- TSG RAN (Radio Access Network): 端末と基地局
- TSG SA (Service & System Aspects): サービスとそれを実施するアーキテクチャ
- TSG CT(Core Network & Terminals): 端末とコアネットワーク間の仕様
3GPPの組織と活動内容, NTT docomo [WebSite]
3GPPの標準化ステップ
標準化の流れは、各検討グループで同じです。標準化作業の流れは、下図に示す3 stageのステップで進められます。
3GPPの標準化は3つのStageを平行させながら進められます。各Releaseの検討開始から終了までの期間は15~18ヶ月程度の時間を要します。下図には、3GPP標準化の各Releaseのスケジュールを示します。
3GPPの5G標準化のスケジュール
3GPPの5G高度化技術のサービス化のスケジュール
下図は、3GPPのRelease-15およびRelease-16の標準化のスケジュールと、標準化された機能が商用サービスとして使われ始める時期を示しています。3GPPで仕様が決定し、標準化活動の終了から約1年もしくはそれより後から、商用サービスが開始さます。(下図:Qualcommサイト[Expanding the 5G NR ecosystem]より)
Expanding the5G NR ecosystem, Qualcomm, [PDF file]
3GPPの仕様では、Release-15およびRelease-16が5Gの技術仕様となります。以下に、Release-15およびRelease-16の位置づけに関し整理します。
3GPP Release-16 and Release-17 Study Timeline
下の図は、3GPPのRelease-16およびRelease-17の標準化活動のスケジュールを示しています。(3GPP Official Web Siteより)
3GPP Release-16の機能概要
3GPPの仕様では、Release-15およびRelease-16が5Gの技術仕様となります。Release-15は5Gの1番目の仕様(5G Phase-1)です。Release-16では5Gの要求仕様を全て考慮した仕様(5G Phase-2)です。以下に、Release-15およびRelease-16の位置づけに関し整理します。
下図は、Qualcomm社の公開資料を参照しております。
Propelling 5G forward A closer look at 3GPP Release 16, Qualcomm, [PDF file]
Propelling 5G forward: A closer look at 3GPP Release 16, Qualcomm, [Webpage]
3GPP Release-17
3GPP Release-17は、2020年に検討が開始されました。Release-17では、Mobile broadband and beyondという事で、5G通信技術の次の技術コンセプトや要求事項のStudyが開始されたばかりです。
3GPP charts the next chapter of 5G standards, Qualcomm [Web Page]
まとめ
モバイル通信の国際標準化団体の3GPPに関して概要をまとめました。3GPPのReleaseのスケジュールを確認する事で、どのような機能が何時頃から商用サービスとして開始されるか知る事ができます。
モバイル通信は3GPP以外にも様々な標準化団体SDOや業界団体により標準化、技術の共通化が進められています。5Gでは、Open Source Projectなどでも活発に5Gの技術仕様やNetworkのDeploy方法の効率化などが検討されています。5GのOPEN化に関して、以下の記事をご参照下さい。
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