5Gとは?C-V2Xで交通の安全はどうなる?

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5Gとは何?車の安全や自動運転は5Gの普及でどのように変わるのか。また車の安全支援の通信規格であるV2X、Cellular-V2X、DSRCについて説明します。

主に5Gと交通安全向け無線通信システムに関して説明します。5G Networkが自動車の通信にどのように使われるのか?についてまとめます。

V2Xとは?V2P、V2V、V2I、V2N とは?

V2X通信とそのソリューションは、車両間および車両とあらゆるものとの通信を可能にします。V2Xの目標は交通安全を改善し、交通の効率的な流れを増やし、環境への影響を減らし、新しい交通における情報通信を提供することです。

V2Xとは、車両とすべての(V2X)通信は、安全性、モビリティ・アプリケーションを可能にするリアルタイムで信頼性の高い通信です。V2X通信により交通や輸送において実用的な情報通信を提供する事で、交通や輸送が再定義されようとしています。

V2XはVehicle-to-everything(車 – あらゆるもの)の接続を表しています。自動車と自動車の外部との間で情報をやりとりできるようにするマルチポイント・ネットワークです。自動車の接続先には、道路インフラ(信号機、道路標識、駐車場など)、歩行者、他の車、ネットワークに分類されます。接続先の種類の違いにより以下のように3GPPで定義されています。

4種類のV2X 通信タイプ:

  • V2I(Vehicle to Infrastructure):自動車と道路インフラ(信号機、道路標識、駐車場など)
  • V2P(Vehicle to Pedestrian):自動車と歩行者
  • V2V(Vehicle to Vehicle):自動車と他の自動車
  • V2N(Vehicle to Network):自動車とネットワーク

C-V2Xとは?

セルラーV2X(Cellular V2X:C-V2X)は、LTEや5Gといったモバイル用の通信ネットワークを用いるV2Xです。

C-V2Xでは、基本的に自車と他のクルマや道路インフラ、歩行者などが持つ機器とダイクレトに通信する事が想定された通信です。これは、LTE Advanced(3GPPのRelease 12)で標準化されたLTE D2D (Device to Device)という端末間通信技術を改良し、クルマの走行に最適化したものになっています。

以下の映像は、C-V2Xの基本を説明するQualcomm社が公開する映像です。C-V2Xのコンセプトや概要が分かりやすくまとめられています。

https://www.youtube.com/watch?v=WGCzzRO-q6o

C-V2X Architecture

PC5 and Uu Interface

Cellular-V2Xには、PC5とUuの2種類のAir Interfaceがあります。PC5は機器間の直接無線通信(Direct Communication)です。PC5の直接無線通信の事をSideLinkとも言います。Uu Interfaceは、車とNetworkの通信(Network Communication)です。PC5とUuの違い、目的について以下に整理します。

Fig, PC5(Side Link) and Uu interface

PC5 (SideLink)は、デバイス間の直接通信です。このSideLinkが自動車の自動運転に重要な役割を果たします。以下図は、PC5とUu interfaceについて説明しています。Quakcomm社の公開資料から参照しています。

Fig, C-V2X Architecture

Introduction to Cellular V2X, Qualcomm [PDF file]

Transmission Mode 3 and Mode 4

C-V2Xは、セルラー無線ネットワークのIn-CoverageOut-of-Coverageどちらにも対応しています。

Transmission Mode 3 (TM3)は、自動車がセルラー無線ネットワークのカバレッジ内にいる時(In-Coverage)の通信モードです。自動車に対して無線ネットワークが通信のスケジューリング・リソースを提供している事を前提とする通信モードです。

Transmission Mode 4 (TM4)は、自動車が無線通信環境の検知に基づき、自律的にリソース選択を行う場合と定義されています。このモードでは無線ネットワークは通信に関与しません。つまり、自動車がセルラー無線ネットワークのカバレッジ外にいる時(Out-of-Coverage)のにも対応した通信モードです。

Fig, C-V2X Designed for Both In-Coverage and Out-of-Coverage

5GAA (5G Automotive Association)

5G技術を車両に導入し、さまざまなサービスやソリューションを開発することを目的に5GAA (5G Automotive Association)という団体がC-V2Xを推進しています。

自動車、技術、電気通信(ICT)等の企業によるグローバルでクロスインダストリーな組織により、将来のモビリティと交通のためのエンドツーエンドソリューションを開発することを目的としています。5GAAでは、車両の通信プラットフォームとしてCellular通信(LTEや5G)を利用しています。

5GAA (5G Automotive Association) [Website]

C-V2Xの3GPP標準化

C-V2X (V2V/V2I)デプロイメントのタイムライン

C-V2Xは、3GPPで標準化されています。3GPPは、3GやLTEなど携帯電話向け通信規格の標準化を行っている国際標準化団体です。C-V2Xも3GPPにて標準化され、自動車通信規格の候補のひとつになりました。

国際標準化団体3GPPが、2016年9月にC-V2Xの初期仕様を公開しました。4G LTEによるC-V2Xは、2017年3月に3GPPが発表したRelease-14の機能として標準化が完了しています。その後5GのC-V2Xなどの標準化、高度化が進められています。

以下の図は、5GAAが公開しているWhite Paperを参照しております。3GPPの標準化Releaseと、C-V2Xの商用化に向けたTime Lineを整理したものです。2020年に5.9GHzでの商用化を目指しています。

Fig, Timeline for deployment for C-V2X (V2V/V2I)

Timeline for deployment of C-V2X – update, 5GAA, [White Paper, PDF file]

上記Time Line図および、以下のTweetで紹介している記事にもあるように、アメリカではC-V2Xの商用サービスが開始されようとしています。

C-V2Xの高度化と3GPP Release間のbackward compatibility

異なる3GPP Releaseの装置を実装する車の間でC-V2Xの通信ができる事は非常に重要です。3GPPのネットワークのDeploymentコンセプトであるRelease間のバックワード・コンパチビリティーがC-V2Xにおいても有あります。

下図は、3GPPのモバイル通信技術のリリースにおけるC-V2Xの高度化を示しています。また、C-V2Xは3GPPの異なるリリース間のバックワード・コンパチビリティーが有る事をしめしています。

Fig, C-V2X: Evolution to 5G maintains backward compatibility

国際標準化団体の3GPPの詳細に関しては以下の記事をご参考下さい。

Cellular LTE-V2XとNR-V2X

3GPPの標準化資料リリースのRelease-14および、Release-15の一部であるC-V2X(Cellular V2X)は、LTE-V2Xとも言われています。3GPPの標準化資料リリースのRelease-16で5G対応のNR-V2Xの仕様検討が進められ、2019年12月に完成しています。Release-17でもNR-V2Xの高度化の仕様検討が進められる予定です。

5GAAでは、NR-V2Xが自動運転をサポートする改善技術として位置付け、LTE-V2Xを補完、共存するものとして定義しています。また、5Gオートモーティブ・アソシエーション(5GAA : 5G Automotive Association)がCeller-V2Xを推進しています。セルラーLTE-V2X規格およびセルラーNR-V2X規格を5GAAは推進しています。

5G: From Concept to Commercialization and What’s Next, Qualcomm, [PDF file]

DSRC (Dedicated Short Range Communications)とは?

DSRC(狭域通信:Dedicated Short Range Communications)とは、狭い範囲での双方向通信を行う無線通信方式です。DSRCは、IEEE(米国電気電子技術者協会)のWi-Fi規格802.11pを使用する無線通信技術です。

日本では、5.8Ghz帯域の無線で利用されている無線通信です。高速道路に設置されたDSRC路側器(RSU: Road Side Unit)と、DSRC車載器(OBU: On-Board Unit)間での双方向通信により、道路上の渋滞や、事故、合流など、刻々と変わる情報を、リアルタイムで提供します。

C-V2Xが採用されるか?DSRCが採用されるか?

DSRCは、20年以上の歴史が有り、技術的な信頼があります。また、政府からの支援も受けています。

C-V2Xは新しい技術です。DSRCと比較した場合、C-V2Xは明らかに技術的に優位です。C-V2Xは3GPPやセルラーのエコシステムやスケール・メリットの影響を受け、更に優位になっていく事が予想されます。

まとめ

5Gとは何?車の安全や自動運転は5Gの普及でどのように変わるのか。車の安全支援の通信規格V2XCellular-V2XDSRCについて説明しました。5Gの関係という事でC-V2Xに関して詳しくまとめました。

5Gの特徴である、高速大容量、低遅延、他接続に関する概要は以下の記事をご参照下さい。

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