5Gとは?エッジコンピューティング(MEC: Multi-Access Edge Computing)編

Edge_computing_image 5G Tech

5Gで実現される、エッジ・コンピューティングの概要をまとめます。正式にはMEC (Multi-Access Edge Computing)という名前で定義されています。MECは3GPP、欧州電気通信標準化機構 (ETSI)にて標準化が行われました。

5GC(5G Core)が導入さ5GがSA(Stand Alone)になれば、MECが利用できるようになります。MECは5Gの超低遅延を実現するための1要素です。

MEC (Multi-Access Edge Computing)のメリット

Edge Computing(MEC:Multi-access Edge Computing)のメリットは以下2点です。

(1)Networkの通信量が減る

(2)通信のレイテンシーが減る

下図に、この2点のメリットを示します。MECはアプリケーション・サーバーをユーザ近くに持ってくるというコンセプトはシンプルな技術です。

Fig, MEC deferent deployment scenario and Physical installation location

4G Networkでは、アプリケーション・サーバーやCouldのアクセス先は大規模なデーター・センターである事が多かったです。ユーザ向けのサービスを提供するアプリケーション・サーバーをユーザの近くに設置するのがMEC (Multi-access Edge Computing)です。エッジ・コンピューティング(Edge Computing)とも言います。5G NetworkがSA(Stand Alone)へ高度化された後、MECが利用できるようになります。

MECサーバーの位置とレイテンシー(Latency)の関係

MECにおけるファイバー1ホップのレイテンシー(Latency)

ネットワーク上では、端末(スマートフォン)からの伝送路の距離が長く距離が長くなるほどレイテンシー(Latency)時間が長くなります。アクセス先サーバーまでの距離とレイテンシー(Latency)時間の関係を下図にまとめました。光ファイバー1 hopのRTT [ms]と距離の関係を整理しました。

Table, Optical fiber cable 1 hop RRT
Table, Optical fiber cable 1 hop RRT

MECにおけるユーザレベルレイテンシー(Latency)

実際のNetworkでは多くの装置でのプロセッシング時間、エンコーディング時間、処理待ち時間などが発生します。通信の距離と、おおよそのレイテンシー(通信の遅延時間)との関係を下図に示しました。MECサーバーまでの距離に応じたレイテンシー(Latency)[ms]を示しています。

Fig and Table, MEC Physical Installation Location and User Level Latency

エッジコンピューティング(MEC)が使われない場合はレイテンシー(Latency)がとても長くなります。MEC (Multi-Access Edge Computing)が使われるようになれば、レイテンシー(Latency)が短くなります。また、同時にNetwork全体のトラフィックも減る事になります。(遠くのサーバーやデーター・センター へアクセスする必要が無くなるからです。)

UPF(User Plane Function)とMECサーバーの展開シナリオ(物理設置場所)

MECサーバーは5GトラフィックのUser-Plane(ユーザ・データ)を処理します。5GトラフィックのControl-Plane(制御信号)はMECでは処理しません。ユーザ近くにMECサーバーと共に設置されるUPFを、特にLocal UFP (Local User Plane Function)と言います。

5G NetworkではUPFとMECサーバーをかなり自由に設置する事ができるように3GPPで標準化されています。MECサーバーにアクセスする場合、User DataはMECサーバーとUser端末間のLocal-UPFを経由します。欧州電気通信標準化機構 (ETSI)の5G MECに関するWhite Paperより参照しています。

MEC in 5G networks, ETSI, White Paper [PDF file]

以下にMECの異なる展開シナリオを説明します。下表は、MECの展開シナリオ(4例)とユーザレベルレイテンシー(User Level Leniency)の関係を整理したものです。

Table, Examples of the physical deployment of MEC (E)

基地局とMECサーバーを併設 [Deep Edge Site]

RANのアンテナサイトやDUの近くにMECサーバーおよびLocal UPFを設置するケースです。

FIG, MEC Deferent Deployment Scenario - Example#1

伝送ノード(基地局-コアNetwork間)とMECサーバーを併設 [Far Edge Site]

RAN内の固定伝送路上(Mid-haulもしくはback-haul)にMECおよびlocal UPFを設置するケースです。

FIG, MEC Deferent Deployment Scenario - Example#2

ネットワーク集約ポイントとMECサーバーを併設 [Aggregated Edge Site]

RANの基地局の集約ポイント(アンテナサイトやDUの集約ポイント)にMECおよびlocal UPFを設置するケース。

FIG, MEC Deferent Deployment Scenario - Example#3

コアネットワークとMECサーバーを併設 [Core Site]

Core Networkが設置されている局内に、UPF(この場合はlocal UPFとはならない)およびMECを設置するケース。

FIG, MEC Deferent Deployment Scenario - Example#4

MECの技術

MEC System Architecture Overview

MECが5G Networkへどのように接続するのかを下図に整理します。分散されたMECサーバーは、5G CoreのUPFと接続されます。ETSIのwhite paperより参照しています。

Integrated MEC deployment in 5G network
https://www.etsi.org/images/files/ETSIWhitePapers/etsi_wp28_mec_in_5G_FINAL.pdf

5G Coreネットワークに関して詳しくは以下の記事をご参照下さい。

Uplink Classifier (UL CL)

5G Networkでは通常、ユーザーデータ(U-Plane)は、UPFを経由してインターネットやデータ・センターに接続されます。MEC を使うときだけ転送先をMECサーバーへ切り替える技術がUP CL(Uplink Classifier)です。UP CL機能により、MECを使う時だけLocal UPFを経由してMECに接続されます。

MECは、低遅延を実現するサービスにおいて利用される事が想定されています。下図は5Gにおける通常の処理ケースと、Local UPFとMECを使うケース(Ultra-Low Latencyのユースケース)を示しています。

Fig, UL CL (Uplink Classifier) - MEC

Session and Service Continuity (SSC)

バの切り替えが必要となりまMECでは、端末が移動する場合にもMECサーバーを切り替えるように設計されています。端末が移動する場合に利用するエッジサーバの切り替えが必要となります。端末が移動した場合に、新たな接続が確立されます。同時に、それまで保持していた接続も残すことが可能になる技術が採用されています。

Session and Service Continuity (SSC) は移動する端末の接続性の切り替えをスムーズに行うための技術です。5G NetworkのSSCは、アプリケーションの要件に応じて、移動する端末の接続性を3種類のModeとして準備しています。

Session and Service Continuity modes
https://www.riverpublishers.com/journal/journal_articles/RP_Journal_2245-800X_615.pdf

SSC Mode

  • SSC Mode1: 端末が移動してもネットワークの同じ経路(同じUPTF)を通る。端末は同じIP addressを使い続ける。
  • SSC Mode2: 端末が移動したら、それまで持っていた接続を一旦切り、移動先で再接続する。IP Addressは移動により変わる、切り替えによる無通信タイミングが存在する。
  • SSC Mode3: 端末が移動したら移動先で接続を確立する。同時にこれまで持っていた接続も保持する。IP Addressは、既存のものと新しいもの2個アサインされる。無通信タイミングが存在しない。

まとめ

5Gで実現される、エッジ・コンピューティングMEC (Multi-Access Edge Computing)の概要をまとめました。

Edge Computing(MEC: Multi-access Edge Computing)のメリットは、(1)Networkの通信量が減る、(2)通信のレイテンシーが減る事です。5Gが高度化する過程でMECが使われていきます。低遅延によって実現される新しいサービスも出てくると考えられます。

5Gに関する全体的な技術に関しては、以下の記事を参照してください。

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