5Gの特徴と4Gとの違い(3つの特徴 – 高速大容量、低遅延、多接続編)

5G network image 5G Tech

5Gとは何?4G携帯電話通信 から5Gへどのように変わるのか説明します。5G通信には、3つの特徴があります。「高速・大容量」(eMBB: enhanced Mobile Broadband)、「低遅延・高信頼性」(URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency Communications)、「多数接続」(mMTC: massive-Machine Type Communication)です。3つの特徴毎に整理します。

5Gは社会インフラとして、通信以外の様々な産業で広く利用される事が想定されています。そのため、5Gの計画、設計段階から4G通信とは異なる様々な要求事項が考慮されています。5Gになるとスマホの通信速度が速くなるだけではありません。5Gは私たち生活の様々なシーンに入り込み、日常生活を大きく変化させる事になります。

5Gの特徴1: 高速・大容量 (eMBB: enhanced Mobile Broadband)

5Gへの周波数が高く、帯域幅の広い電波の活用

5Gでは、4G(LTE)無線通信で利用されている電波の周波数に対し、これまで携帯電話通信では使われなかった周波数の電波が使われます。4G(LTE)で利用されている周波数は6GHz以下の周波数でBellow 6 (B6)と言われています。Bellow 6は無線通信に利用しやすい周波数で、広い周波数帯域の確保が困難な電波です。

5GではAbove 6 (A6)と言われる、6GHz以上の高い周波数(28GHz帯域)の電波も利用されます。6GHz以上の周波数は、広い周波数帯域を確保できるため高速、大容量の無線通信が実現されます。

4G LTE band and 5G NR band
4G LTE band and 5G NR band

アンテナ技術:Massive MIMO

Massive MIMO (Multiple Input Multiple Output)は、4G(LTE)で既に利用されている複数アンテナ技術です。複数のアンテナを使う事で通信速度を上げ、また通信の信頼性を向上させる技術です。5GでMassive MIMOはより広く使われます。

Massive MIMOを利用し無線の送信・受信を行う技術により、無線環境が安定している場所で高速・大容量の無線通信を実現します。

アンテナ技術:ビームフォーミング(Beam Forming)

ビームフォーミング (Beam-Forming)は、4G(LTE)で既に利用されている複数アンテナ技術です。5Gでより広く使われます。

ビームフォーミング (Beam-Forming)を使う技術により、基地局のアンテナから移動するスマホ(端末)のみをめがけ電波を送信する事ができます。この技術より、効率的な無線通信が可能となり、より多くのユーザが基地局と通信できるようになります。

Beamforming antenna technology
Beamforming antenna technology

5Gの特徴2: 低遅延・高信頼性 (URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency Communications)

無線インターフェースの進化(無線通信の遅延低減)

5Gでは、高い周波数の電波も新たに利用されるようになります。それを考慮した無線インターフェースの仕様変更が行われました。

伝送時間間隔(TTI: Transmission Time-Interval)が4G LTEでは1msだったがものが、5G NRでは1/4の0.25msになります。

4G LTEでは、15kHzのみだったサブキャリア間隔 (Sub-Carrier Spacing)が、5G NRでは15KHz、30kHz、60kHz、120kHzの複数のサブキャリア間隔から選択が可能になりました。このように、1つのサブキャリア間隔 (Sub-Carrier Spacing)の幅を長くすることで、送信間隔を短くしながらより多くのデータを伝送できるようになります。

5G無線通信では高い周波数帯の電波を使うことで、連続した広い帯域幅を使えるため、この仕組みが有効になります。5Gの無線通信ではこのような方法で、通信の遅延を低減しています。下図はQualcomm社の公開資料から参照しています。5G NRの各サブキャリア間隔について説明した図です。

Future of 5G, Qualcomm, [PDF file]

MEC: Multi-access Edge Computing (エッジコンピューティング)

5Gの普及伴いエッジコンピューティング (MEC: Multi-Access Edge Computing)が注目を集めています。MECには2点の大きなメリットがあります。MECにより、(1)通信のレイテンシーを減らす、(2)Network全体のトラフィック量を減らす事ができます。

アクセス先のサーバーをユーザの近くに設置するためにの仕様が5Gでは考慮されています。大規模データーセンターに設置されている接続先サーバーが、あなたの家の近くのネットワーク・サイトに設置された場合、レイテンシー(通信の遅延)は少なくなります。この技術をエッジコンピューティング (MEC: Multi-Access Edge Computing)と言い低遅延を実現する方法です。伝送路が短くなる事で、ネットワーク全体のトラフィックを減らすというメリットも有ります。

Physical Installation Cases for Some MEC Servers
Physical Installation Cases for Some MEC Servers

MEC(Multi-access Edge Computing)はモバイル通信システム向けに検討されていましたが、固定網通信などを含めより広く通信に取り入れられる事となりました。エッジコンピューティング (MEC: Multi-Access Edge Computing)に関して詳しくは以下の記事を参照下さい。

5G Core Network (5GC)

4G移動体通信のコアネットワークEPC (Evolved Packet Core)は、5Gが高度化される段階で5G Core (5GC)に置き換わる事が想定されています。5GCではコアネットワークの仕様を全く新しくする事により、エッジコンピューティング (MEC: Multi-Access Edge Computing)を実現しやすい仕様にしています。

5GCでは、CUPS(Control and User Plane Separation)として、コントロールプレーン(制御信号: Control Plane)機能データ・トラフィック(ユーザープレーン: User Plane)機能が明確に分離されます。制御信号の処理等を行うコントロールプレーンを中央集中型で配備しながら、ゲートウェイ等のユーザープレーンの機能を分散配置できるようにしています。

5G System Architecture
[Refrence] ETSI TS 123 501 V15.2.0 (2018-06) 4.2.3 Non-roaming reference architecture, Figure 4.2.3-1: 5G System architecture Information added by Teppei Nagumo

5GCに関する詳しい説明は以下の記事をご参考下さい。

Network Slicing (ネットワークスライシング)

端末(スマートフォンやIOT機器)、アクセスネットワーク(Access Network)、コアネットワーク(Core Network)が5Gに対応する事で、ネットワークスライシング(Network Slicing)という機能が利用できるようになります。この機能は物理的なネットワークインフラストラクチャとは別に、論理的な複数の異なるネットワークを構成する機能です。

通信毎(もしくは通信要求の同じ通信毎)に個別にネットワーク上の必要なリソース(通信ポートの帯域や、通信機器のCPUやメモリ領域など)を割り当てたり、解放したりします。個別に割り当てられたネットワークのリソースをスライスと言います。5Gではスライス毎に、通信に必要とされるサービスレベルが異なります。

End to End Network Slicing Overview
End to End Network Slicing Overview

ネットワークスライシング (Network Slicing)は、端末(User Equipment)から、Access NetworkとCore NetworkがEnd-to-Endで機能的に対応する必要です。そのため、5G初期の仕様NSA (None-Stand Alone)ではネットワークスライシングに対応しません。5G SA(Stand Alone)となり、Core Networkが5GC (5G Core)になり、端末や、Access Networkが機能的に対応する事でネットワークスライシング(Network Slicing)の機能が提供できるようになります。

ネットワークスライシング (Network Slicing)技術により個別に超高品質のスライスを準備する事で、超高品質の通信を実現する事が可能となります。サービス品質の違うネットワークスライスを準備する事で、様々なサービスに柔軟に対応できるNetworkになります。

ネットワークスライシング (Network Slicing)に関して詳しくは、以下の記事をご参照下さい。

5Gの特徴3: 多数接続 (mMTC: massive Machine Type Communication)

Massive-IoT(Massive Internet of things)、IIoT(Industrial-IoT)

5Gではネットワークに接続される、スマートフォンではないIoT機器の接続数が爆発的に増えます。LPWA(Low Power Wide Area)と言われる、センサーやスマートメーターは非常に低い電力で5G Networkと通信をするよう設計されています。

IoTのLPWAは、セルラー系非セルラー系にわかれます。国際標準化団体3GPPにより標準化されているセルラー系LPWAのほうが技術的に優れています。セルラー系LPWAは、4G LTEの時代から既に、eMTC、NB-IoTとして実用化されています。5G NRでは、NR-IoT(New Radio IoT)として、5Gの無線通信であるNew Radioを使う事で、従来より効率的な無線通信が可能となります。

IoT (Internet of things) Classification
IoT (Internet of things) Classification

5Gでは、産業分野のIoTつまり、IIoT(Industrial IoT)として様々な産業の精密機械、装置、(工場などの)生産システムが5Gを通じてインターネットに繋がる事が想定されています。

IoTの詳細に関しては、以下の記事を参照して下さい。

コネクテッドカー (V2X:Vehicle-to-Everything)

5Gの普及に伴い、自動車が5Gのネットワークを利用した通信をする事になります。自動運転を支える技術の1つが5G通信になります。自動車が信号機や歩行者(スマホやウエアラブル・デバイスなど)と通信するようになり、交通の効率化や安全強化されます。

Fig, C-V2X Architecture

V2X (Vehicle to everything)は、自動車が様々な物と通信をするための仕様として考えられた通信です。C-V2X (Celler-V2X)として、5G (New Radio)や4G(LTE)の携帯電話通信ネットワーク(セルラー分野通信)の自動運転への利用が進められています。5G技術を車両に導入し、様々なサービスやソリューションを開発することを目的に5GAA (5G Automotive Association)という団体がC-V2Xを推進しています。

5GAA (5G Automotive Association) [Website]

C-V2Xの詳細に関しては、以下の記事を参照して下さい。

まとめ

当記事では、5Gに関して、5Gの特徴である、「高速・大容量」(eMBB: enhanced Mobile Broadband)、「低遅延・高信頼性」(URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency Communications)、「多数接続」(mMTC: massive Machine Type Communication)の点から整理しました。

5Gでは紹介した特徴以外に、Networkの仮想化やCould化(Could-native化)が進んでいます。5Gの仮想化やCould化(Could-native化)に関しては以下の記事を参照してください。

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