モバイルの無線アクセスネットワークであるRAN(Radio Access Network)に関係する用語を説明します。CRAN(Centralized-RAN)とDRAN(Distributed-RAN)の違いを説明します。
また、CRANデプロイメントで採用されるBBU Pooling(Base Band Unit Pooling)技術についても説明します。
無線アクセスネットワーク(RAN: Radio Access Network)とは?
5Gや4Gモバイルネットワークは、大きく無線アクセスネットワーク(RAN: Radio Access Network)とコアネットワーク(CN: Core Network)に分かれます。下図は、5GのRANとコアネットワークを示したものです。
- [用語集]
- RU: Radio Unit
- DU: Distribution Unit
- CU: Cauterized Unit
- DN: Data Network
- UE: User Equipment
RANとは、5Gや4GモバイルネットワークのRAN(Radio Access Network)の事です。RANは携帯電話(スマートフォン)などの端末を、無線接続を通してコアネットワークに接続するためのネットワークです。また、RANは携帯電話(スマートフォン)と基地局アンテナの間の無線接続を制御するためのネットワークです。
CRANとDRANの違いと、BBU(Base Band Unit)の位置
無線アクセスネットワークはベースバンド処理をするBBU(Base Band Unit)を配置する場所の違いで、D-RANとC-RANの異なるデプロイメント方法が有ります。
DRAN(Distributed-RAN)とは?
D-RANでは、ベースバンド処理を行うBBUがRadio Unit(RU)の近くに配置されます。3G(第三世代移動通信)では、このD-RANでデプロイメント方法しか存在しませんでした。5Gのケースでも人口が少ないエリアではこのD-RANのデプロイメント方法が採用されています。
CRAN (Centralized-RAN)とは?
CRANでは、ベースバンド処理を行うBBUを中央局に集約して配置します。CRANは比較的新しい技術で、人口が多いエリアで採用されるRANのデプロイメント方法です。
5Gでは、このDRANとCRANの違いはRANのデプロイメント方法の違いとして、5Gの無線エリアを展開する場所や通信事業者の計画に応じて選択されます。
DRANとCRANの比較
RANデプロイメントの違い、DRANとCRNAの違いを以下の表で整理します。(参照情報:linkedin post link)
DRANのメリットは、フロントホール(RUとDU間の光ファイバーの接続)の距離が短く、配線工事の手間や費用が少ない事がメリットです。
CRANのメリットは、ベースバンド処理をする装置を集約する事でBBU Poolingができる事です。また、別々のRU間の連携をさせる無線干渉制御などの機能を実施しやすい事です。
CRAN(Centralized-RAN)詳細
CRANのメリット
CRANは、ベースバンド処理装置(BBU: Base Band Unit)を中央局に設置する事で、ベースバンドの処理リソースをトラフィックの状況に応じて、必要な分だけ必要とするRUにアサインする事ができます。この方法により、通信事業者は高価な無線処理リソースをトラフィックの状況に応じてフレキシブルに利用する事ができます。
DRANのデプロイメント方法では各RUに見込まれる最大トラフィックを考慮したベースバンドの処理リソースが固定的にRU毎に設置されます。しかし、CRANでは必要に応じて必要な分だけ、RUにベースバンドの処理リソースが動的にアサインされます。従って、CRANではRAN全体としてベースバンド処理リソースの無駄が大幅に減ります。
BBU Pooling(ベースバンド処理リソースのPooling)とは?
ベースバンド処理のリソースを中央局に集約して、必要なベースバンド処理リソースを必要なRUに対してアサインする技術をBBU Poolingと言います。BBU PoolingによりダイナミックにベースバンドリソースがRUにアサインされます。ORAN allianceなどの標準化団体によりBBU Poolingの標準化が行われました。
ORAN allianceの標準化活動に関しては以下の記事をご参照下さい。
BBU Poolingはクラウド分野の処理リソースのPooling技術がベースになっています。このPooling技術を無線ネットワークのベースバンド処理に適用したのがBBU Poolingです。
無線制御を行う処理装置をベースバンドユニット(BBU)と言います。ベースバンドユニットでは、信号処理やプロトコル制御が行われます。この無線制御処理をベースバンド処理といいます。
5Gや4Gの無線アクセスネットワーク(RAN)では、このベースバンド処理は非常に重たい処理であるため、高価な装置を大量に必要とします。BBU Pooingによりベースバンド処理のリソースはRAN全体で効率的に利用される事になります。
また、このBBU Poolingにより、RANのベースバンド処理を行うサーバーの予期しない問題、サーバーの不具合に対応する事ができます(ヒーリング技術)。
DRANからCRANへの技術トレンド
人口が多いエリアでの5G RANや4G RANのデプロイメントでは、CRANが使われるのがトレンドとなっています。都心部や、都市部でCRANデプロイメントする事により、ベースバンド処理リソースの効率的な利用や、UR間の連携による無線干渉制御などが利用しやすくなるからです。
ヘトロジニアス・ネットワーク(HetNet: Heterogeneous Network)としてのCRANデプロイメント
CRANのデプロイメント方法は、ヘトロジニアス・ネットワーク(HetNet: Heterogeneous Network)としてデプロイされるケースが多いです。HetNetは、広い範囲をカバーするマクロセルに加えて、スモールセル基地局など送信電力の異なる様々な形態の基地局を連携させて展開させるネットワークの事を言います。(広い意味では、5G、4G、3GやWiFiなど異なるネットワークを組み合わせる事です。)
ヘトロジニアス・ネットワークでは、異周波間の連携がCA(Carrier aggregation)として行われます。また、複数RUが協調しっ干渉をキャンセルするFeICIC(Further Inter-Cell Interference Coordination)や複数RUが協調し送受信制御するCoMP(Coordination Multi-Point)、使われます。
5G RANベースバンド処理およびプロトコルスタック
RANでは携帯電話(スマートフォン)などの端末の無線接続を制御するためのプロトコル処理が行われています。そのプロトコル処理の一部がベースバンド処理です。
ベースバンド処理とは、RANで行われる信号処理のPhysicalレイヤー以上のLayer1, Layer 2 (MAC and RLC), Layer3の処理の事を言います。(変調および復調処理より上位のレイヤーの処理です。)
ベースバンド処理には、Layer1のPhysical処理、MAC、RLCのリアルタイム性が必要とされる処理も含まれます。
下図に、5Gのプロトコル処理(制御信号)の概要を例として示します。
下図に、5Gのプロトコル処理(ユーザデータ)の概要を例として示します。
- [用語集]
- RRC: Radio Resource Control
- SDAP: Service Data Adaptatin Protocal
- PDCP: Packet Data Convergence Control
- RLC: Radio Link Control
- MAC: Media Access Layer
- PHY: Physical Layer
まとめ
この記事では、モバイルの無線ネットワークのRAN(Radio Access Network)について説明しました。特に、CRAN(Centralized-RAN)とDRAN(Distributed-RAN)の違いに関して説明しました。また、CRANのメリットやCRANで採用されるBBU Pooling技術についても説明しました。
RANの仮想化や、VRAN(Virtual-RAN)、ORAN(Open-RAN)に関しては以下の記事をご参照下さい。
コメント