楽天モバイルのプラチナバンドの700MHz帯(バンド28)

Eye Catch Image 楽天モバイルへのプラチナバンドの狭帯域700MHz帯(バンド28)の割り当て Allocation of platinum band narrowband 700MHz band (band 28) to Rakute 5G Tech

楽天モバイルに、プラチナバンドの周波数(周波数の低い電波)が2023年10月に割り当てられました。帯域幅は狭く合計6MHz幅で、狭帯域です。具体的には、700MHz帯(バンド28)のFDD (Frequency Division Duplex)システムの周波数帯域の電波が楽天モバイルに割り当てられました。

楽天モバイルに割り当てられたプラチナバンドの700MHz帯(バンド28)の周波数について説明します。どういった特徴の周波数なのかを説明します。このプラチナバンド(700MHz帯域)の周波数でどのようなサービスの提供が可能かも説明します。

楽天モバイルは、2024年6月に、この700MHz帯(バンド28)の周波数でのサービスを(ごく一部)開始しております。しかし、楽天モバイルはKDDIの800MHz(バンド18)をローミングにより大規模に利用しています。

楽天モバイルの700MHz帯域(バンド28)プラチナバンド

楽天モバイルのプラチナバンド、700MHz帯は合計6MHz幅しかない

楽天モバイルに割りあてられたプラチナバンドは、700MHz帯の周波数です。4G LTEの場合は3GPPにてバンド28と規定されている周波数帯域の電波です。この帯域の周波数は、移動体通信ではFDD(周波数多重化)通信方式で利用されます。そのため、アップリンク通信用の周波数とダウンリンク通信用の周波数がペアとされて別々に割り当てられました。

楽天モバイルへの割り当てられた周波数は、アップリンク715.0MHz~718.0MHzの3MHz幅と、ダウンリンク770.0MHz~773.0MHzの3MHz幅の、合計6MHz幅の帯域です。(下図参照)

図、楽天モバイルの狭帯域プラチナバンド(700MHz帯、バンド28) Figure, Rakuten Mobile's narrowband platinum band (700MHz, band 28)

日本のプラチナバンド再割り当ての検討

プラチナバンドは、移動体通信のエリアを確保しやすい周波数です。かつ、利用できる周波数の帯域幅が狭く、とても貴重な周波数帯域です。そのため、プラチナバンドと言われています。

日本では、プラチナバンドは700MHz帯(バンド28)、800MHz帯(バンド26/18/19)、900MHz帯(バンド8)の周波数が移動体通信に使われています。この、プラチナバンドの各移動体通信事業者への割り当ての再編が検討されました。この帯域の周波数を楽天モバイルが持っていなかった事が、検討の大きな理由です。

楽天モバイルの保有する周波数

楽天モバイルが保有している具体的な周波数を以下の表にまとめます。楽天モバイルは5G NRと4G LTEのサービスを以下の周波数を利用して、日本で移動体通信事業を展開しています。楽天モバイルへ割り当てられた、プラチナバンドの700MHz帯(バンド28)の周波数も表に入れています。

表:楽天モバイルの割り当て周波数(バンド一覧) Table: Rakuten Mobile Wireless Frequency (Assignment Band) List

楽天モバイルは、主に1.7GHz帯域(バンド3)の周波数を使って4G LTEサービスを日本全国で展開しています。楽天モバイルは1.7GHz帯の基地局が最も多いです。3.7GHz帯域(n77/n78)の周波数を使って5Gサービスを展開しています。

楽天モバイルの基地局数(2023年3月末時点)の詳細は以下の記事を参照下さい。

楽天モバイルが保有する周波数とその帯域幅を以下のグラフに示します。楽天モバイルへ新たに割り当てられた700MHz帯(バンド28)の周波数も、グラフに記載しています。楽天モバイルに割り当てられたプラチナバンドは低い周波数でかつ帯域幅がとても狭い(狭帯域である)事がグラフからわかります。

グラフ:楽天モバイルが保有するのバンドと帯域幅 Graph: Bands and Bandwidth owned by Rakuten Mobile

プラチナバンドとは?

プラチナバンドとその特徴

移動体通信用(モバイル通信用)の周波数の中でプラチナバンドは、最も低い周波数の電波です。この低い周波数は、「電波の飛びが良い」ですが、「速い通信速度は出ない」という特徴があります。(下図参照)

下図に、周波数帯域とその電波の特徴を整理します。周波数の低い電波(プラチナバンド)は、電波の飛びが良いです。低い周波数の電波は、建物や障害物を回り込んで電波が届きます。また、建物の壁などを電波が透過しやすいです。そのため、建物の中(屋内)の通信エリアを確保しやすいで。

つまり、周波数の低い電波(プラチナバンド)は、移動体通信の無線エリアを広く確保するのにとても有効です。

周波数の低い電波(プラチナバンド)は、広い周波数帯域を確保する事が困難です。低い周波数の帯域は、無線通信が可能なエリアを確保しやすい電波なので様々な用途に利用されています。そのため、基本的には狭い周波数帯域を使って通信をする必要が有ります。

つまり、周波数の低い電波(プラチナバンド)は、無線通信で大量のトラフィックの処理や、速い通信速度を出す事が困難です。

図:周波数の違いによる電波特性の違い Figure: Differences in radio wave characteristics due to differences in frequency

無線帯域(バンド)の違いによる携帯電話無線エリアと通信速度との関係について、詳細は以下の記事を参照してください。

日本でのプラチナバンドへの周波数割り当て状況(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天)

プラチナバンドとは、5G/4Gなどのモバイル通信に利用される周波数の中で、日本では最も低い周波数です。日本でモバイル通信用のプラチナバンドとされている周波数は700MHz帯(バンド28)、800MHz帯(バンド26/18/19)、900MHz帯(バンド8) の周波数です。

このプラチナバンドに、移動体通信用に割り当てられている正確な帯域と、その帯域を保有している移動体通信事業者を以下の表に整理します。

表:プラチナバンド一覧(日本) Table: List of Platinum Bands (Japan)

700MHz帯(バンド28)、800MHz帯(バンド26/18/19)、900MHz帯(バンド8)では、移動体通信事業者は、アップリンクおよびダウンリンクそれぞれ、10Mhz幅から15MHz幅で周波数が割り当てられている事がわかります。

プラチナバンドへの周波数割り当て状況図(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の周波数がわかりやすい図)

日本のプラチナバンドの周波数の割り当て状況を図で可視化したものを下に示します。「周波数帯域」、「3GPPで規定されているバンド名(バンド名)とその正確な帯域」、「各通信会社に割り当てられている正確な周波数と、その隣接関係」が図で分かります。

下図には、楽天に割り当てられるプラチナバンド、700MHz帯域(バンド28)の周波数も記載しています。

表:プラチナバンド一覧(日本) Table: List of Platinum Bands (Japan) Webページ用画像:Posted in Teppei Log (https://teppeilog.com/) Prepared by Teppei Nagumo (南雲鉄平)

プラチナバンド以外の、ローバンド、サブ6、ミリ波の各帯域の移動体通信事業者に割り当てられている帯域の詳細を示す図は以下のサイトを参照してください。

プラチナバンドを使った楽天の移動体通信サービス

楽天が700MHz帯域(バンド28)を使ってサービスを展開する場合のメリットを説明します。また、700MHz帯域(バンド28)を使ったサービスの想定される問題についても説明します。

楽天モバイルの狭帯域700MHz(バンド28)のサービスのメリット

プラチナバンドの700MHz(バンド28)の電波を利用する事で、楽天モバイルは広い無線サービスエリアを確保できます。特に、1.7GHz帯域(バンド3)の電波で、カバーできなかった東京などの都心部の屋内エリア(Indoor area)や建物や障害物の影となっておりサービス圏外となっていた部分で通信が可能となります。

700MHz(バンド28) の電波ほうが、サービス可能な無線エリアの展開をしやすいです。700MHz帯の電波のほうがよく飛び、障害物を回り込み、建物の壁を透過しやすいからです。

楽天が自社でプラチナバンドの700MHz(バンド28)の基地局を全国に展開する事で、KDDIからの800MHz帯(バンド16/18)のローミングを減らす事ができます。

楽天の狭帯域700MHz(バンド28)の通信速度の問題

700MHz帯域(バンド28) の狭帯域の電波特有の問題もあります。合計6MHz幅(アップリンク3MHz幅、ダウンリンク3MHz幅)の狭帯域の周波数では高い通信速度は出ません

理論値でダウンリンク通信速度が最大で30Mbpsとなっています(条件:2×2 MIMOアンテナ、256QAM変調方式)。そのため、実際の無線環境では、10Mbpsやそれ以下の通信速度となります。この700MHz帯域だけの通信では、スマートフォンでYouTubeを楽しむことは難しいです。

楽天の狭帯域700MHz(バンド28)のユーザー(トラフィック)収容の問題

将来的に楽天のユーザーが増えた場合、700MHz帯域(バンド28) の合計6MHz幅の帯域幅いでは多くのユーザー(サブスクライバー)を収容する事が困難とされています。

NTTドコモの計算では、1100万ユーザーを日本全国で収容する事が可能とされています。2024年06月時点で楽天モバイルの加入者は約700万人なのでしばらくは問題無いと思われます。将来的に楽天モバイルの加入者が増えた場合や、またユーザーのトラフィック量が増えた場合、700MHz帯域(バンド28) の合計6MHz幅の帯域幅いでは収容しきれなくなる事が考えられます。

楽天モバイルの狭帯域700MHz(バンド28)のサービス

楽天モバイルの狭帯域700MHz(バンド28)のサービスは、NOKIAの無線機(RU: Radio Unit)が使われます。大量の700MHzの楽天モバイルの無線機がデプロイされる計画は無いようです。KDDIから800MHz帯域をローミングしている事からも、それがわかります。

楽天モバイルWebサイト、楽天モバイル、“プラチナバンド” 700MHz帯の基地局展開においてノキア社製の無線機を採用、[link]

楽天モバイルはKDDI(800MHz帯域、バンド16/18)をローミング利用

楽天モバイルは自社の無線エリアでカバーできない部分をKDDIの800MHz帯(バンド16/18)をローミングする事で補っています。主に、田舎のエリアで自社の基地局で無線エリアをカバーできていない地域にてKDDIの800MHz帯の周波数をローミングしています。それ以外でも、都心部で楽天モバイルが自社の無線でカバーしきれていないエリアはこのKDDIの800MHz帯の周波数をローミングして補っています。

KDDIの800MHz帯(バンド16/18)は、アップリング15MHz幅、ダウンリンク15MHz幅の周波数帯域です。基地局数は4G LTE用の基地局が日本全国で約73,000局設置されています。人口の少ない田舎のエリアや、屋内のエリアまで広く無線通信ができるエリアをカバーしている周波数です。

KDDIと楽天モバイルとの間のローミングに関する契約や、正確なローミングエリアは以下のKDDI公式Webサイトに公開されています。

KDDI Webサイト、楽天モバイル向けローミングサービス提供エリア(地図)、[link]

KDDI Webサイト、楽天モバイル株式会社サービスへのローミング提供について(基本は800MHz帯域、2019年10月1日から2026年9月30日まで), [link]

楽天モバイルの米AST SpaceMobileの衛星通信の採用

楽天モバイルは、米AST SpaceMobileの人口衛星の通信を計画しています。AST SpaceMobileの人口衛星とスマートフォンが直接通信をする方法です。人口衛星との通信ですと、日本全土が通信領域となるため、楽天モバイルはこちらに力を入れる可能性もあります。

楽天モバイルWebサイト、楽天モバイル、AST SpaceMobileとの衛星と携帯の直接通信による国内サービスを2026年内に提供を目指す計画を発表、[link]

まとめ

楽天モバイルに割り当てられた、プラチナバンド700MHz帯(バンド28)の周波数帯域の電波について説明しました。また、一般的なプラチナバンドの電波の特徴に関して説明しました。また、プラチナバンドを利用して移動体通信を行う場合のメリットとデメリットに関しても説明しました。

また、日本では移動体通信事業者(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)に、どのようにプラチナバンドの周波数が割り当てられているのかも説明しました。

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