モバイルネットワークのVirtual-RAN(VRAN)およびOpen-RAN(ORAN)の違い、それぞれの意味を説明します。
モバイルネットワークで進んでいる、RAN(Radio Access Network)の仮想化(Virtualization)およびRAN技術インターフェースのOpen化(ORAN化)の概要をまとめます。VRANとORANは異なるコンセプトです。5G Network市場では、RANの仮想化(Virtualization)と、RAN技術インターフェースのOpen化(ORAN化)が同時に進んでいます。このモバイルネットワークのトレンドについてまとめます。
VRANとORANは、モバイルネットワークの無線部分で近年出てきた新しい技術です。RANはクラウド化する方向性や、インターフェースがオープン化される流れなどいくつかのトレンドが同時に進行しています。
RAN(無線アクセスネットワーク)とは?
RANとは、5Gや4GモバイルネットワークのRAN(Radio Access Network)の事です。5Gや4Gモバイルネットワークは、大きく無線アクセスネットワーク(RAN)とコアネットワークに分かれます。(下図参照)
RANは携帯電話(スマートフォン)と基地局アンテナの間の無線通信を制御するためのネットワークです。下図に示すように、5G Network (SA: Sand Alone)は複数の異なる装置により構成されています。
- [用語集]
- RU: Remote Unit
- DU: Distributed Unit
- CU Centerized Unit
- DN: Data Network
- UE: User Eqipment
モバイルネットワークのRAN部分は、通信できるエリアを確保するために基地局(RU: Radio Unit)を多くの場所に設置する必要があります。そのため、RANはモバイルネットワークの中で非常にコストのかかる部分です。モバイルネットワークでは、60%~80%のコストがRAN部分で発生しています。(以下のSamsungのWhite Paper参照)
Samsung, Open Radio to 5G, [White Paper, PDF file]
CRAN(CentralizedRAN)やDRAN(Distributed RAN)などのRANのデプロイメントの違いに関しては以下の記事をご参照下さい。
通信事業者(オペレーター)は、コアネットワークを仮想化する事で大幅なコスト削減を行いました。NFV(Network Function Virtualization)およびSDN(Software Defined Networking)が採用され、ソフトウエアとハードウエアのエコシステムが構築され、コアネットワークが仮想化されました。RANの領域でも仮想化が進んでいます。5GC (5G Core)に関して詳しく知りたい方は以下の記事をご参照下さい。
VRAN(Virtual-RAN)とORAN(Open-RAN)の意味とその違い
VRANとORANは異なるコンセプトです。5G Network市場では、RANの仮想化(Virtualization)と、RAN技術インターフェースのOpen化が同時に進んでいます。
ORANは、フロントホールの仕様のオープン化から始まり、RAN仕様のオープン化、標準化が進んでいます。VRAN化と比べてORAN化のほうが市場で進んでいます。(参照、Dell’Oro GroupのPress Releaseより)
Dell’Oro Group, Press Release, Sept-3, 2021, Open RAN Forecast Revised Upward, [Web Page]
VRAN(Virtual-RAN)とは?
仮想化されたRANがVirtualized-RAN(VRAN)です。ソフトウエアとハードウエアを分離(HW&SW disaggregation)して扱うRANを仮想RAN(VRAN)と言います。この事をRAN Virtualizationと言います。VRANでは専用の装置では無く、汎用サーバー(COTS server: Commercial Off-The-Shelf server)を使ってRANのベースバンド処理(Base Band Processing)を行います。
VRANではソフトウエアの仮想化環境が使われています。コンテナ環境もしくは、仮想マシン(VM: Virtual Machine)がソフトウエアのプラットフォームとしてVRANでは使われています。このようにRANの仮想化によりクラウド技術がRAN領域で利用されるようになりました。この事をRAN Cloudificationと言います。
ORAN(Open-RAN)とは?
ORANとはOpen-RANの事です。O-RAN allianceという団体により、RANのインターフェース技術仕様のOpen化および標準化が進められています。下図にORANのコンセプトを示します。
O-RAN allianceは次世代のRANをより拡張性が高く、よりオープンでインテリジェントにすることを目的に活動している団体です。O-RAN allianceは通信事業者および通信機器ベンダーによる団体です。
O-RAN allianceでは、RANの装置間のインターフェースだけでなく、ソフトウエア機能間のインターフェースも仕様定義しOpen化を進めています。下図は、O-RAN allianceのインターフェース仕様の概要です。
- [用語集]
- CU-CU: Central Unit – Control Plane
- CU-UP: Central Unit – User Plane
- O-Cloud: Orchestrator and Cloud Platform
- O-DU: ORAN – Distributed Unit
- O-RU: ORAN – Radio Unit
- MAC: Media Access Control
- PHY: Physical Layer
- RLC: Radio Link Control
- RRC: Radio Resource Control
- SDAP: Service Data Adaptation Protocol
- UP: User Data Plane
- CP: Control Plane
- M-Plane: Management Plane
- SMO: Service Management and Orchestration
O-RAN allianceで標準化が進められている技術仕様は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)やETIS(European Telecommunications Standards Institute)などの主要な標準化と同期されており、重複した標準化など無駄が発生しないようにされています。
O-RAN allianceが技術標準化で連携している、団体は以下です。
- 3GPP (Third Generation Partnership Project), [3GPP Web site]
- ETSI (European Telecommunications Standards Institutes), (欧州電気通信標準化機構) [ETSI Web site]
- GSMA (Global System for Mobile Communications), [GSMA Web site]
- NGMN (Next Generation Mobile Network Alliance), [NGMN Web site]
- The Linux Foundation, [The Linux Foundation Web site (Global), (Japan)]
- ONF (Open Network Foundation), [ONF Web site]
- SCF (Small Cell Forum), [SCF Web site]
- TIP (Telcom Infra Project), [TIP Web site]
NetworkのOpen化の詳細およびORAN allianceの活動の詳細に関しては以下の記事をご参照下さい。
従来のRANからVRAN/ORANへの進化
従来のRAN(T-RAN: Traditonal RAN)は、限られたグローバル巨大ベンダー(ERICSSON, NOKIA, HUAWEI, Samsungなど)のみがRAN専用製品を開発し通信事業者(オペレーター)に提供していました。そのため、RAN装置間のインターフェースやRANのソフトウエア仕様の大部分はOPENにされる事はありませんでした。
RAN領域の市場のORAN化の流れにより、RANインターフェースや技術仕様のOPEN化が進んでいます。それにより、多くのプレーヤーがRAN領域のビジネスに参加し、RANのマルチベンダー化が進んでいます。
RAN仮想化により、従来使われていたRAN専用装置では無く、汎用サーバーが使われるようになりました。それにより、RAN技術のクラウド化が進みRAN領域にクラウド技術が使われるようになりました。
まとめ
この記事では、モバイルネットワークのVirtual-RAN(VRAN)およびOpen-RAN(ORAN)の違い、それぞれの意味を説明しました。
5G Networkのクラウドネイティブ化およびコンテナ化に関して更に詳しく知りたい方は以下の記事をご参照下さい。VNF(Virtual Network Function)からCNF(Cloud-Native Network Function)に関して記載しています。
コメント