5GのIoTとは?インダストリアルIoT (IIoT)とは?LPWA(Low Power Wide Area)のNB-IoTとeMTCについて

Eye catch image for blog post - “What is IOT in 5G? What is Industrial IOT (IIOT)?” 5G Tech
[Reference], Unsplash, Simon Kadula (@simonkadula) , https://unsplash.com/

5GにおけるIoT(Internet of Things)についてまとめます。IoTは4G LTEより前から3GPPで標準化されてきた物をネットワークに接続する技術です。

5Gのコンセプトのひとつとして、mMTC(Massive Machine Type Communications)があります。スマートフォンだけでなく大量の「物」がモバイルネットワークに無線接続される事が考慮されています。この「物」とは、家電、工場機械、オフィス機器、カメラなどのセンサーなどが想定されています。

IoTは5Gで技術的により高度化され広く使われます。特に産業分野のIoTをインダストリアルIoT(IIoT: Industrial IoT)と言います。産業分野の製造の最適化や生産性向上を目的としたIoTがインダストリアルIoTです。

IoT(Internet of Things)とM2M(Machine to Machine)の違い

IoT(Internet of Things)とは?

IoTは、5G NRや4G LTEなど3GPPで標準化された無線通信を利用し、インターネットに物を接続する技術です。また、IoTは「センサー」、「サーバー」、「ゲートウェイ」から構成され、それらがインターネットにより接続されています。センサーで物の状態を確認し、それらの情報をインターネット経由でサーバーに送ります。

IoTでは、サーバーにデータが集約されデータ分析されます。そのためIoTは、ビッグデータの活用などが期待されます。また、インターネットに接続されている事でセキュリティーの問題があります。

IoTは、大きく2種類の分類する事ができます。センサー、スマートメーター系IoT(LPWA: Low Power Wide-Area)」と、ミッションクリティカル系IoTに大きく分類できます。更にセンサー、スマートメーター系IoTは、セルラー系LPWA非セルラー系LPWAに分類する事ができます。IoTの分類を下図に示します。

FIG: IoT (Internet of things) Classification, prepared by Teppei Nagumo

M2M(Machine to Machine)とは?

M2M(Machine to Machine)は物同士が互いに通信し、データの交換や機器の制御などを自動的に行う技術です。M2Mは、IoTに含まれる位置づけの技術です。

M2Mは、ユビキタスコンピューティング(Ubiquitous Computing)の考えが元となっており、IoTとは分けて定義されています。M2Mに対応する用語として、M2H(Machine to Human)は、物と人が通信する技術です。

5G/4G IoT市場およびNB-IOT/eMTC市場の拡大

様々な産業が、5G/4G Networkを利用してIoTのビジネスを行っています。今後IoTは接続端末数が急激に増加する事が見込まれています。IoTは市場が拡大して、関連するビジネスが急速に広がります。

下図は、ERICSSONの公開資料(Ericsson Mobility Report, 2022)から参照しています。5G/4Gのブロードバンドおよびミッションクリティカル系のIOTと、セルラー系IoTのLPWA(NB-IOT/eMTC)は端末数が急激に増加する事が予想されています。セルラー系のIoTの市場は今後大きく拡大します。

Graph, Number of Cellular IoT connections by segment and technology

Ericsson Mobility Report, [Ericsson official site, 2022 report]

IoT(Internet of Things)の種類とその分類

IoTは、「LPWA(センサー、スマートメーター系IoT)」と、「ミッションクリティカル系IoT」に大きく分類できます。

セルラー関連のIoTは3GPPにて標準化が進んでいます。下図に、各セルラー系IoT技術の3GPPでの標準化の流れを示します。

FIG, Cellular IoT 分類と 3GPPでの標準化

上記図は、Qualcomm社の公開している以下の資料を参照しています。

Qualcomm, Expanding 5G in Industrial IoT, [Qualcomm official site, PDF file link]

5G/4G/3Gなどのモバイル通信の国際標準化団体の3GPP (Third Generation Partnership Project)の詳細に関して、以下のブログ記事を参照してください。

センサー、スマートメーター系IoT (LPWA: Low Power Wide Area)

センサー、スマートメーター系のIoTは、LPWA(Low Power Wide Area-network)と言われており、スマートフォンの無線通信(eMBBのユースケース)より少ない消費電力や少ない無線リソースでモバイルNetworkとの無線通信を行います。

センサー、スマートメーター系のIoTは、更に3GPPで標準化されている「セルラー系LPWA(Cellular LPWA)」と、それ以外の「非セルラー系LPWA(None-Cellular LPWA)」に分類されます。

セルラー系 LPWA のNB-IoT とeMTCの違い

LPWAのIoTは、標準化団体3GPPのRelease-8から標準化が行われています。効率化や、新たな要求条件が考慮されNB-IoT(Narrow-Band IoT)と、eMTC(Enhanced Machine Type Communication)として標準化が進められています。スマートフォンより消費電力が少ない無線通信規格として、センサーやスマートメーター向けの通信として3GPP標準化されています。

eMTCとNB-IoTの違いについて、特に技術仕様面から説明します。下図は、eMTCとNB-IoTの技術仕様を比較した図です。

Table, Comparison of LTE-M and NB-IoT Capabilities

[Reference] IoT Standards, 3GPP standards, ITU, (PDF file link)

NB-IoTは、3GPPのRelease-13でCAT Mとして標準化されました。CAT Mは200kHzの無線帯域を利用するLTE通信です。非常に帯域幅の狭い無線通信です。音声通話や、端末に移動(モビリティー)には対応していません。端末が移動しない固定通信です。

eMTCは、3GPPのRelease-13でLTE CAT M1として標準化されました。全二重通信に対応しています。1.08MHzの無線帯域を利用するLTE通信で、音声通信も可能です。端末の移動(モビリティー)にも対応しています。

NB-IoT(LTE CAT NB1 and CAT NB2)とeMTC(LTE CAT M1 and CAT M2)の3GPP標準化の流れと関連技術

NB-IoT(LTE CAT NB1)eMTC(LTE CAT M1)は3GPPのRelease-13にて標準化されました。その後、効率化や新たな要求事項の考慮が行われています。

5Gの商用化以降もIoTの標準化が進んでいます。LPWAのIoT装置の回路を単純化し、デバイスを安く生産できるような技術が要求条件として考慮されています。

下図は、3GPPにおけるLPWAのNB-IoTとeMTCの標準化の流れとモバイルネットワークの世代を整理したものです。

FIG, 3GPP IoT eMTC and NB-IoT Roadmap

5GにおけるNR-IoT(New Radio IoT)

3GPP Release-15以降は、5GとしてNR(New Radio)の無線通信を利用したIoTが仕様化されています。より少ない電力、より少ない無線リソースのみを利用するワイヤレス通信ができるように標準化が進められています。

NR-IoTとは、5Gの無線通信を前提としたNew Radio IoTです。5GのNetworkの整備が進み、無線通信も4G LTEから5GのNew Radioの利用が広がっています。5Gの無線通信であるNew Radioを使う事で、効率的な無線通信が可能となります。より電池の持ちが長くなり、より多くの端末(IoT機器)を基地局配下に接続する事ができるようになります。

ミッションクリティカル系IoT

「ミッションクリティカル系(Mission Critical)」のIoTは、超低遅延、超高信頼性(URLLC: Ultra-Reliable and Low Latency)の通信が必要とされます。具体的には、自動車の自動運転(C-V2X: Cellular-Vehicle to Everything)や、VR:Vertual Reality/AR:Augmented Reality(仮想現実/拡張現実)技術や、遠隔医療機器の接続などを言います。

自動運転分野の通信であるC-V2X(Cellular Vehicle to Everything)も3GPPにより標準化が進められています。また、D2D(Device-to-Device)をサポートするPC5(Slide-Link)もIoTに含まれます。自動車産業のIoTセルラー通信C-V2Xに関しては以下の記事を参照してください。

5GにおけるIIoT(インダストリアルIoT)

IIoT(Industrial IoT)は、産業分野におけるIoTのことです。IIoTは産業機械・装置・システムなどがインターネットを通じて繋がることによって実現するサービスやビジネスモデルを指しています。

製造業の生産効率・安全性の向上、物流・輸送の最適化など目的とする技術です。IIoTにより、生産原料の調達、生産、物流、販売、消費者へのデリバリのサプライチェーンの効率化が見込まれています。それにより、産業分野でのイノベーションの加速が期待されています。

IIoTは常時接続が前提となり、高度なアクセスレベルが要求されます。IIoTは新しいIoT技術であり、ミッションクリティカル系IoTに含まれます。

まとめ

この記事では、5GにおけるIoTについてまとめました。IoTに関係する用語とそれらの意味がわかるように整理しました。

IoTの種類とその技術的な仕様の違いに関しても簡単に説明しました。特に、IoTの3GPPにおける標準化の過去の流れや、IoTの技術仕様について説明しました。

コメント